米国レアアース企業、世界の主要鉱業企業ランキングに初のランクイン:地政学的リスクが市場を再編

Rare Earths


グローバルな鉱業セクターにおいて、大きな変化が起きています。特にレアアース分野では、米国企業が初めて世界の主要鉱業企業ランキングに名を連ねました。これは、地政学的な要因と供給安定への懸念が、従来の市場構造を大きく揺るがしていることを示しています。


レアアース市場の新たな夜明け:MP Materialsの躍進

これまで主要鉱業企業ランキングには、中国のChina Northern Rare Earthのみがレアアース生産企業としてランクインしていました。しかし、今回の発表で、カリフォルニア州のMountain Pass鉱山を運営するMP Materialsが40位に初登場し、評価額は110億ドルに達しました。同社の価値は年初から3倍に跳ね上がっています。米国防総省(DoD)との画期的な契約が、投資家の見方を覆し、小規模企業が多かったレアアース産業の構図を大きく変えました。一方で、中国からの低価格攻勢に苦しむ他社への波及効果はまだ不透明です。オーストラリアのLynas Rare Earthsも評価額61億ドルで追い上げていますが、MP MaterialsとChina Northern Rare Earthが当面、この分野をリードする見込みです。


リチウム市場の転換点と貴金属の台頭

リチウム市場では、Zangge Miningが中国国内のリチウム鉱山の操業停止を発表しました。これは、2022年のピーク以降、壊滅的な状況にあったリチウム関連株に一時的な活気をもたらしました。中国のGanfeng LithiumとチリのSQMが再びランキングに顔を出しましたが、Albemarleは惜しくも51位にとどまりました。EVバッテリー向けリチウムの厳しい経済状況は、中国国外の生産者間の競争を最終局面へと導いています。

一方、貴金属セクターは好調を維持しています。Impala Platinumが16位上昇して50位に返り咲き、Valterra(旧Anglo Platinum)も9位上昇しました。金、銀、白金族金属(PGM)生産企業およびロイヤルティ企業が主要鉱業企業ランキングの価値の31%を占め、年初の24%から増加しました。この貴金属の強さは、カナダがオーストラリアを抜き、鉱業企業の拠点価値で初めて首位に立つ結果ももたらしました。


伝統的鉱業大手企業の課題と多様化の終焉

今回のデータは、鉱業の伝統的な大手5社(BHP、Rio Tinto、Glencore、Vale、Anglo American)が、2024年に合計1,200億ドルの損失を計上し、今年に入ってわずか1%しか回復していないことを示しています。これらの多様なポートフォリオを持つ巨大企業は、かつてランキングのトップ5を独占していましたが、現在では指数全体の24%未満を占めるに過ぎません。これは、幅広い商品ポートフォリオを持つ多様化戦略が、もはやかつてのような優位性をもたらさないことを明確に示唆しています。スウェーデンのBolidenやポーランドのKGHMといった欧州の老舗企業もランキングから脱落しており、投資家がより選別的な姿勢を見せていることが浮き彫りになりました。


金属フォーカス 編集部コメント

今回の主要鉱業企業ランキングの動向は、グローバルな金属・鉱物産業が構造的転換期にあることを明確に示しています。特にレアアース分野における米国の台頭は、サプライチェーンの再構築と地政学的リスク分散の動きが加速している証左です。今後は、国家戦略と結びついた重要鉱物の確保が、企業の競争力と国際社会での地位を左右する重要な要素となるでしょう。


コメントを投稿