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HRC |
実需は安定も、低調な表面需要と輸入攻勢で市況に不透明感
2025年6月5日時点で、欧州ホットコイル(HRC)価格は下落圧力が続いている。需要の停滞、積極的な輸入オファー、そしてバイヤーの慎重姿勢が市場心理を冷やしている。
欧州系ディストリビューターによると、「製鉄所は依然として620~630ユーロ/トン(工場渡し)を目指しているが、成立価格としては現実的ではない。多くの買い手は夏場のさらなる価格下落を見込み、第4四半期の反発を待っている」という。
実需(リアルデマンド)は安定しているものの、仕入れの先延ばしにより「表面需要」が低迷している点が共通認識となっている。市場では全体的に弱気ムードが広がっているが、一部からは「2024年も同様だったが、秋には想定より早く市況が反発した」との声もある。
市中では一部大手製鉄所が580ユーロ/トン(工場渡しルール)で販売したとの未確認情報もあり、現実の商談価格は大きくぶれている。
S&Pグローバル・プラッツによると、北西欧の国内HRC価格は前日比10ユーロ安の600ユーロ/トン(ルール地方、工場渡し)、南欧では同5ユーロ安の585ユーロ/トン(イタリア、工場渡し)と評価された。
一方、輸入材は引き続き競争力があり、インドネシア産HRCは500ユーロ/トンを下回るCFR南欧向けオファーが出ている模様。ただし、EUの反ダンピング調査や「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」導入による不確実性を理由に、バイヤーの大半は様子見を続けている。
欧州系トレーダーは、「ユーロ高を背景に輸入は魅力的だが、CBAMの制度変更を前に、どの製品を先に買うべきか迷いがある」とコメントしている。
輸入HRC価格は、プラッツによると北西欧で520ユーロ/トン(CIFアントワープ)、南欧で510ユーロ/トン(CIFイタリア)と、いずれも前日から横ばいだった。
金属フォーカス編集部コメント
欧州HRC市況の軟化は、実需に基づかない「調整的な買い控え」が主因で、CBAMの不確実性と輸入圧力がそれを加速させている。短期的にはさらなる下値リスクが残るが、Q4以降の反発シナリオに備えた在庫戦略の再構築が、今後のキーになるだろう。CBAMが本格始動する2026年に向け、調達先の多様化と価格変動への備えが企業競争力を左右する局面に入っている。
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