グレンコア、豪初のコバルト精製所「クウィナナ」へ原料供給【金属フォーカス】

Glencore

DRC産コバルト水酸化物を最大3年間供給、最終投資判断へ前進

資源大手グレンコア(Glencore)は、オーストラリア・西オーストラリア州クウィナナ(Kwinana)に建設中の同国初となるコバルト精製所に対し、原料となるコバルト水酸化物(cobalt hydroxide)を供給することで合意した。

供給先は豪コバルト・ブルー(Cobalt Blue)社が主導するクウィナナ製錬所。契約期間は商業稼働開始から3年間で、年間最大供給量の50%をグレンコアが担う。最低供給量は合計3,750トンで、1年目に750トン、2年目と3年目にそれぞれ1,500トンが供給される。

原料はグレンコアが75%を保有するカモト・カッパー・カンパニー(Kamoto Copper)およびムタンダ・マイニング(Mutanda Mining SARL)から調達され、いずれもコンゴ民主共和国(DRC)に位置する。

国内コバルトの供給網構築へ前進

コバルト・ブルーのアンドリュー・トンCEOは、「今回の契約締結は、クウィナナ計画のリスク低減と2025年末に予定される**最終投資判断(FID)に向けた重要な一歩である」と述べた。

また、「世界有数の多角的資源企業であるグレンコアとの提携により、当社がグローバルなコバルト市場において確固たる地位を築くことができる」とし、今後、同盟国間でのバッテリー・重要鉱物サプライチェーンの構築に戦略的役割を果たす意向を示した。

同社は豪州産コバルトの供給を優先する一方で、「市場動向を踏まえて調達先を拡大する」とも述べている。

イワタニ豪州と共同事業へ、ブロークンヒルの混合水酸化物も処理

2025年4月には、イワタニ・オーストラリア(Iwatani Australia)とFID前の共同開発契約(コンソーシアム契約)を締結しており、FID後は両社で70:30の合弁会社を設立し、建設・操業を行う予定。

クウィナナ製錬所では、グレンコアからの第三者原料のほか、ニューサウスウェールズ州ブロークンヒル鉱山からの混合水酸化物(Mixed Hydroxide Precipitate)も処理される。

【金属フォーカス編集部コメント】

コバルトはリチウムイオン電池や次世代EV市場で不可欠な重要戦略鉱物であり、クウィナナ精製所の本格稼働は、「資源加工の国内回帰」を目指す豪州政策の象徴的プロジェクトといえる。一方で、原料の多くが依然としてDRCなど高リスク地域に依存している現実も浮き彫りになっており、長期的には豪州国内での自給体制構築が鍵となる。グレンコアの参画により、国際的な需給連携の中で豪州のコバルト産業基盤強化が加速する可能性がある。

コメントを投稿