【コンゴ鉱山水没】カモア・カクラ鉱床、銅供給に新たな不安【金属フォーカス】

Ivanhoe Mines

地震による地下浸水、世界第3位級の供給源が操業停止の危機

トロント拠点のアイバンホー・マインズ(Ivanhoe Mines)が開発を進めるコンゴ民主共和国のカモア・カクラ銅鉱山が、5月中旬に発生した地震の影響で広範囲な地下浸水に見舞われ、操業継続に深刻な懸念が生じている。影響を受けたカクラ地下鉱は、同鉱床全体の生産量の約70%を占め、世界の銅供給に重大な支障をきたす恐れがある。

電気系統と排水設備に損傷、年内操業停止の可能性も

地震後に水位は上昇し、排水用ケーブルや配管の損傷が報告された。中国パートナーの紫金鉱業集団(Zijin Mining)と中信金属(CITIC Metal)は、大型ポンプの緊急手配に動いており、アイバンホーは1秒間に1,000リットルの排水を行っているとしたが、目標は3,000リットル以上とされる。

Zijinは「屋根崩落があった」とし、2025年通期の生産計画に影響が出るとの認識を示したが、アイバンホー側は崩落や支柱の構造破壊は確認されていないと反論し、真相は不明なままだ。だが、アイバンホーはわずか数日後に2025年の生産予測(52~58万t)を撤回しており、事態の深刻さを裏付けている。

世界の銅供給への波及懸念

ゴールドマン・サックスによると、再開時期や必要な修復・設計変更の規模には「高い不確実性」があるとし、最大27.5万トンの供給ロスも想定される。これは国際銅研究会(ICSG)が予測する2025年の世界余剰29万トンを大きく相殺し得る規模だ。

同鉱床は表面ストックからの処理で当面の出荷に支障はないとされるが、鉱山内の浸水が長引けば、世界の電気自動車、送電インフラ、再生可能エネルギー関連製品への影響は不可避となる。

世界の銅鉱山、相次ぐ供給ショック

今回の浸水事故は、近年相次ぐ供給ショックの一つだ。カナダのファースト・クオンタムは2023年にパナマで最大級の銅鉱山を抗議デモで閉鎖し、アングロ・アメリカンも技術的問題で生産縮小に追い込まれている。今後も、銅供給の脆弱性が市場を不安定化させる要因となるだろう。

金属フォーカス編集部の視点:

エネルギー転換に不可欠な銅は、主要鉱山の障害によって需給バランスが大きく崩れやすい金属だ。カモア・カクラのトラブルは、脱炭素社会に向けた重要素材の地政学的リスクを浮き彫りにしている。

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