グレンコア、豪州子会社に2.2兆円資産移管 メガ合併へ布石

グレンコア

豪州を拠点に石炭・銅・バナジウムなど戦略資産を統合

コバルト供給契約で電池金属分野にも注力

スイスの資源大手グレンコア(LON: GLEN)が約220億ドル相当の海外資産を豪州子会社に移管した。これは将来的なメガ合併を視野に入れた企業構造再編と位置づけられている。

この再編により、グレンコア・インベストメント・Pty Ltdの保有資産は420億ドル規模に倍増した。豪国内での現金移転38億ドルと、社内株式発行6億1,400万ドルが必要だった。対象資産には、カナダ、南アフリカ、コロンビアの石炭鉱山、アルゼンチンの銅プロジェクト、南アのマンガン・クロム・バナジウム事業などが含まれる。

今回の動きは単なる統合ではなく、アジア市場に近い豪州に戦略資産を集約することで、合併時のシナジーを最大化する狙いがある。特にライバルであるリオ・ティント(ASX/LON: RIO)との統合構想が再浮上しており、投資家からは「豪州市場では石炭資産の評価倍率がロンドンより高く、魅力的な統合先になる」との声が上がっている。

グレンコアは過去に石炭部門の分離を検討したが、現在はカナダのEVR(エルク・バレー・リソーシズ)を含む全石炭事業を豪州法人に集約。EVRはブリティッシュコロンビア州で製鋼用炭鉱山を4カ所運営し、港湾設備ネプチューン・ターミナルの46%も保有している。また、コロンビアのセレホン炭鉱や南アのインプンジ熱炭複合体、バナジウム事業も豪州管理下に入った。

さらに、アルゼンチンのMARA銅プロジェクトも再編に組み込まれており、銅、バナジウム、マンガンといった脱炭素社会で需要が高まる金属にも布石を打っている。

一方、グレンコアは電池金属分野でも攻勢をかけている。豪州のコバルト・ブルー社(ASX: COB)と提携し、西豪州クウィナナ製錬所向けにコバルト水酸化物を3年間供給する契約を締結。初年度は750トン、以降は年1,500トンの供給が保証される。原料はコンゴ民主共和国のカモト銅鉱山およびムタンダ鉱山から調達される。

このように、資産移管と新たなコバルト供給契約を通じて、グレンコアは成長戦略と統合戦略の両面を加速している。特に豪州を戦略の中核に据える姿勢が鮮明だ。

金属フォーカス編集部コメント:

グレンコアの再編は、資源企業の統合が本格化する前兆となる可能性がある。豪州は地理的優位性に加え、エネルギー・電池素材双方での資産集中が進む注目市場だ。今後、他の資源大手による豪州資産の再編や連携も加速するだろう。

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