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リチウム |
米中間の新たな関税合意にもかかわらず、アルゼンチン、チリ、ボリビアの「リチウムトライアングル」地域は依然として世界のリチウム供給における中核を維持している。ただし、関税措置の影響や価格低迷、代替資源の登場が雇用や税収に懸念を与えていると専門家らがPlatts(S&Pグローバル)に語った。
チリ鉱業会会長マヌエル・ビエラ氏は、「現時点でいくつかの鉱物に関税はないが、今後の変化に備えるべきだ」とし、代替素材(ナトリウム、ニッケル)の影響や新規プロジェクトの供給増も指摘。現在、世界には60件以上のリチウムプロジェクトが存在し、価格下落と税収減を招く可能性があると語った。
チリは1〜4月に91,610トンのリチウムを輸出(前年比+2.7%)し、日本、韓国、米国向けが増加する一方、中国向けは2.4%減少した。中国のリチウム塩輸入のうち95.8%をチリとアルゼンチンが供給しているという現状から、同地域の重要性は依然として高い。
米国の地政学的視点でも、アルゼンチンとチリは極めて重要な鉱物供給国であり、短期的な輸出減少は見込まれていない。ただし、貿易摩擦が価格形成や供給網全体のコストに波及し、エネルギー転換にも逆行する動きとなる可能性がある。
アレフ・エナジーのマネージングディレクター、ダニエル・ドレイザー氏は、「電気自動車の重要部材には輸入品が多く、関税は全体のコスト構造を押し上げる」と指摘。特にアルゼンチンは国内経済が不安定な中で、国際的な影響が投資誘致の妨げにもなるとした。
他方、ボリビアはリチウム量産化に向けた投資・契約交渉を加速中で、低コスト化と供給拡大を目指している。
また、リチウムトライアングル外では、ブラジルがレアアースやリチウム供給で注目を集める。国際コンサルタントのフェリペ・ラモス氏によれば、「ブラジルは世界のレアアース埋蔵量の約23%を保有するが、採掘は少ない。米国にとって極めて重要な供給先」だという。
Plattsによると、5月20日時点のリチウムFOB価格(リチウムトライアングル地域)は8,600ドル/トンで安定しており、2024年9月の価格開始時点から14%下落している。
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