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| South Korea steel |
韓国政府は鉄鋼業界を含む基幹産業に対して大規模金融支援パッケージを発動し、地政学リスクとコスト上昇圧力への対応を強化した。Financial Services Commission (South Korea)は約54億ドル規模の支援策を提示し、鉄鋼セクターの資金流動性を下支えする方針を明確化した。
鉄鋼業界向け流動性支援と産業再編ファンド
韓国政府は鉄鋼業界を中心に、流動性支援と資金調達環境の改善を同時に進める。今回の支援パッケージは総額80兆ウォン規模で構成され、民間融資と政策金融を組み合わせて資金供給能力を強化する設計となっている。
さらに金融当局は、貸出支援、社債発行支援、投資支援の三本柱を導入し、企業の資金調達コスト低減を図る。また中小企業向けにはP-CBOプログラムを通じた信用保証を拡大し、信用力の低い企業でも資本市場へアクセス可能な環境を整備する。その結果、鉄鋼業界全体の資金繰り圧力は段階的に緩和される見通しとなっている。
加えて構造改革支援として、1兆ウォン規模の産業再編イノベーションファンドを設立する。このファンドは鉄鋼、石油化学、半導体、自動車、ディスプレイ、二次電池など6大産業を対象とし、長期的な産業構造調整を促進する役割を担う。
中東リスクと鉄鋼コスト上昇による収益圧迫
鉄鋼業界は中東情勢の緊張拡大により、物流コストと原材料コストの上昇圧力を強く受けている。海上運賃はトン当たり28〜35ドルへ急騰し、従来水準の約18ドルから大幅に上昇したことで、海外調達の経済性が低下した。
その結果、Hyundai SteelはH形鋼を含む一部鋼材の輸出オファーを停止し、調達環境の悪化に対応した。一方で各社は自動車用鋼板や洋上風力向け超広幅厚板など高付加価値製品へのシフトを加速し、マージン確保戦略を強化している。
しかしながら国内建設需要の低迷が継続しており、政策支援の効果を相殺する構造的需要不足が残る。また低価格の中国材流入が競争環境をさらに厳格化している。
スクラップ価格上昇と電炉コスト構造の悪化
鉄鋼原料市場ではスクラップ価格の上昇がコスト構造をさらに悪化させている。日本産H2スクラップの韓国向け輸入価格はトン当たり53,000〜55,000円へ上昇し、前月比で4,000〜5,000円の上昇となった。
さらに深海原料スクラップ(HMS 1&2 80:20)はトン当たり380〜390ドルへ上昇し、前月比で30〜35ドルの上昇を記録した。この動きは電炉メーカーの原料コストを直接押し上げ、収益構造の圧迫要因として作用している。
その結果、鉄鋼企業は単なる価格転嫁だけでなく、高付加価値製品比率の拡大と製品ポートフォリオの高度化を同時に進める必要に迫られている。
金属フォーカス 編集部コメント
今回の韓国支援策は短期的には流動性供給を通じて鉄鋼業界の財務安定性を支える効果を持つ。しかしながら、需要低迷と原料コスト上昇という構造問題は依然として解消されていない。今後は高付加価値化とコスト耐性の両立が企業競争力の核心となる。


