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| Copper Prices | 
ロンドン金属取引所(LME)で銅価格上昇が加速し、史上最高値を記録しました。米中貿易緊張緩和への期待が市場心理を押し上げ、供給面の制約と貿易歪みに拍車をかけています。3か月物先物は1トンあたり11,146ドルまで上昇し、年初来24%以上の上昇を示しました。
供給リスクと世界の生産減少
銅は産業用の基幹金属であり、世界経済の健康指標としても注目されます。しかし、今年は米国の貿易政策を巡る混乱で価格が大きく振れました。7月には米国が銅関税を検討した影響で価格が急騰したものの、最終的に関税免除が発表されると急落しました。その結果、取引のアービトラージ(裁定取引)が活発化し、米国外の供給不足を助長しました。
加えて、アフリカ、チリ、インドネシアの主要鉱山で予期せぬ生産遅延が発生し、2026年に向けて市場は大幅な供給不足の懸念を抱えています。英CRUによれば、世界の年間銅生産量はパンデミック開始以来初めて減少に向かう見通しです。英アングロ・アメリカンやカナダのテックなど大手銅鉱山企業も、2026年の生産が予想を下回る可能性を警告しています。
市場見通しと投資家心理
主要アナリストは銅価格のさらなる上昇を予想しています。シティグループは来年上半期に1トン12,000ドル到達の可能性を示唆し、モルガン・スタンレーは2026年に20年以上ぶりの深刻な供給不足を見込んでいます。一方、需要面では中国を中心とした消費成長の不透明感があり、短期的な投資リスクも存在します。ゴールドマン・サックスは中国の銅需要が今年5.3%成長すると予測しており、米中首脳による貿易協議の進展期待も価格を押し上げています。
銅価格上昇は、再生可能エネルギー、電気自動車、データセンター向け需要の増加という長期トレンドに支えられています。その一方で、貿易摩擦や地政学リスクは依然として市場の重石となっています。投資家は供給不足リスクと需要動向を慎重に見極める必要があります。
金属フォーカス 編集部コメント
銅価格上昇は、供給制約と新興市場需要の拡大が同時に進む異例の局面です。2026年には世界的な供給不足が顕在化し、価格ボラティリティはさらに高まる見通しです。メーカーや投資家は戦略的な調達とリスク管理を強化すべきでしょう。

