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トランプ政権は重要鉱物の供給網強化に向け、ウォール街で用いられる株式取得手法を積極的に活用しようとしています。国家安全保障に不可欠な鉱物の生産者に対し、株式のような持分を取得することで、安定的な供給体制を構築する狙いです。これは中国依存からの脱却を目指す一環であり、米豪間でも具体的な協議が進んでいます。
政府が狙う重要鉱物分野への新たな投資手法
今月初め、複数のオーストラリアの鉱業企業がワシントンで米政府関係者と面談し、株式に近い持分取得の可能性が示されました。具体的な案件は示されなかったものの、ワラント(新株予約権)を用いた取得手法が検討されています。これは政府が資金を前払いせずに企業の株式を将来購入できる権利であり、税金投入のリスクを抑制するメリットがあります。
トランプ政権はMPマテリアルズ社の事例をモデルとして、同様の手法で国内外の重要鉱物企業に出資を拡大しようとしています。MPマテリアルズへの4億ドルの出資は、国防総省が主導し、民間ファンド出身者が戦略的役割を担う異例の案件でした。この動きは、重要鉱物の国内安定供給と中国依存の脱却を強く示しています。
地政学リスクを背景に重要鉱物サプライチェーンの再構築へ
米中間の貿易摩擦激化により、希土類元素や永久磁石原材料の中国からの輸入が制限されました。このため、多くの米企業が調達の遅延に苦しんでいます。トランプ政権は国家安全保障上のリスクを踏まえ、IntelやUSスチールへの出資と並び、重要鉱物への介入を強化中です。
この戦略は単なる救済策に留まらず、長期的な産業政策の一環として位置付けられています。米政府が市場からリスクを分散しつつ影響力を持つことで、戦略鉱物の供給網を強固にする狙いです。また、政策の複雑化に伴い、鉱業者は複数の官庁や関係者と連携する必要が出てきています。
金属フォーカス 編集部コメント
トランプ政権の重要鉱物政策は、単なる国家介入を超え、金融手法を駆使した戦略的投資へと進化しています。これは米国の供給網再構築における新たな局面を示し、グローバルな鉱業市場にも大きな波及効果をもたらすでしょう。今後、日米豪などの連携強化や、他の戦略鉱物への拡大も注目されます。