日・韓・中企業連携:トヨタ通商、LG-華友コバルト合弁事業に資本参加で北米EV電池サプライチェーンを強化

Toyota Tsusho


トヨタグループの商社、豊田通商は、中国の正極材メーカー、華友コバルトと韓国のLG化学の合弁事業に25%の株式を取得しました。この資本参加により、合弁事業の所有構造が大きく変化します。LG化学は株式比率を維持する一方、華友コバルトの出資比率は24%に低下しました。豊田通商は、この提携を通じて北米のバッテリーメーカーへ正極材を供給します。この動きは、複雑化する国際的な法規制に対応し、強固なサプライチェーンを構築する戦略的な判断と言えます。


米国IRA法規と重要鉱物法案への対応を加速

今回の資本参加は、米国のインフレ削減法(IRA)の要件をクリアするために実施されました。IRAは、外国の懸念企業(FEOC)の所有比率が25%を超える事業体を税額控除の対象から除外します。華友コバルトの出資比率を24%に引き下げることで、この合弁事業はIRAの規定を完全に満たしました。これにより、北米市場での競争力が大幅に向上します。加えて、この合弁事業の再編は、欧州連合(EU)の重要鉱物法案(CRMA)や、米国の「One Big Beautiful Bill Act」といった新たな法規制にも対応するものです。こうした国際的な動きは、バッテリーサプライチェーンにおける地政学的なリスクを低減する上で不可欠な要素となっています。


グローバルな連携でEVバッテリーの未来を拓く

豊田通商の今回の投資は、単なる資本参加以上の意味を持ちます。同社は、LGエネルギーソリューションとの間で、米国におけるバッテリーリサイクル事業でも提携しています。これにより、バッテリーの製造からリサイクルまで、循環型サプライチェーンを構築する計画が加速します。日中韓の主要企業が連携することで、正極材の安定供給体制が確立され、電気自動車(EV)市場の成長に不可欠な基盤が築かれます。国際的な法規制が厳格化する中、このようなグローバルなパートナーシップが、今後のバッテリー産業の競争優位性を決定づけるでしょう。


金属フォーカス 編集部コメント

この資本提携は、国際的な法規制がサプライチェーンの構築に与える影響を明確に示しています。特に、重要鉱物や産業用マテリアルの調達において、単一国への依存度を減らす必要性が高まっています。今回の豊田通商の動きは、日韓中企業が協力して、北米市場での競争力を確保しようとする戦略的な試みです。今後、同様の国境を越えた提携がさらに活発化し、グローバルなバッテリーサプライチェーンの地図を塗り替えることになると予測します。

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