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Norsk hydro aluminium |
大手アルミニウムメーカーのノルスク・ハイドロは、銅からアルミニウムへの代替が米国で加速していると指摘します。これは、米国の関税問題や世界的なサプライチェーンの制約が背景にあります。特に暖房、換気、空調システム(HVAC)やEV(電気自動車)分野で、このトレンドが顕著になっています。
なぜ米国でアルミニウムへの代替が加速しているのか
米国では、厳しいコスト管理と「目的適合性」を重視する製造業の文化があります。ノルスク・ハイドロのチャピス氏は、銅がアルミニウムの3倍以上の価格である場合、アルミニウムソリューションのコストは約半分になると言います。ロンドン金属取引所(LME)のデータも、この価格差を裏付けています。現在、LMEの銅とアルミニウムの価格比率は、代替が進むとされる3.5倍を大きく上回っています。米国企業は、関税による追加コストを支払ってでも、アルミニウムの使用で大幅なコスト削減を実現しています。さらに、性能や耐久性も銅と同等レベルを維持できるため、多くのOEM(相手先ブランドによる生産)が迅速に素材を切り替えています。
EV、自動車、HVACにおけるアルミニウム採用の拡大
自動車産業では、1990年代にフォルクスワーゲンが自動車用ラジエーターを銅からアルミニウムに切り替えたのが先駆的な例です。現在では、ほとんどの自動車用ラジエーターがアルミニウム製です。同様に、EV(電気自動車)向けケーブルでもアルミニウムの採用が進み、一部のEVではケーブルの約10%がアルミニウム製になっています。HVAC・冷凍産業でも、アルミニウムの使用率は過去5〜6年間で倍増し、現在では約40%に達しています。ダイキン工業は、2025年までにエアコンユニットでの銅使用量を半減させる計画を発表するなど、大手メーカーも積極的にアルミニウムへのシフトを進めています。
金属フォーカス 編集部コメント
銅市場は、新規鉱山の不足や鉱石品質の低下により、長期的な供給不足が予測されています。国際エネルギー機関(IEA)の予測では、2035年までに銅供給が需要を30%下回る可能性があります。このような背景から、金属市場は価格だけでなく、供給安定性を重視する時代へと移行しています。アルミニウムは、銅の代替品としてだけでなく、持続可能な産業構造を支える戦略的な重要素材として、今後さらに価値を高めるでしょう。