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Global Aluminium market |
グローバルなアルミ市場は、複数の要因が絡み合い、複雑な局面を迎えています。特に、EUの**炭素国境調整メカニズム(CBAM)**の導入、米国の関税政策、そして地域ごとの供給動向が市場の焦点となっています。これらの重要テーマを詳しく分析し、今後の市場動向を探ります。
EU市場の焦点:CBAMと関税動向
EUでは、2026年1月1日からCBAMの本運用が始まります。しかし、市場参加者はCBAMのコスト算出方法や証明書価格の不確実性に懸念を表明しています。EU排出量取引制度(ETS)との連動性や、第三国で支払われた炭素価格の控除ルールが不明確なためです。この不確実性が、2026年のアルミ契約交渉を難しくしています。
一方で、欧州のアルミプレミアムはCBAMの影響をすでに受け始めています。一部の消費者は、関税支払い済み(DP)のアルミを前倒しで購入する動きを見せています。加えて、カナダからの関税免除品が予想より少なく、モザンビークのMozal製錬所からの供給懸念も相まって、ロンドンの倉庫在庫は歴史的な低水準です。これにより、アルミのP1020Aプレミアムが回復しています。
供給源の多様化:インドネシアの生産拡大と米国市場の課題
アジアでは、インドネシアのアルミ生産能力が急拡大しています。2025年末までに年間70万〜75万トン、2026年末までに125万〜150万トン、そして2030年までには年間600万〜800万トンに達する見込みです。この生産拡大は、グローバルなアルミサプライチェーンに大きな影響を与えるでしょう。
一方、米国市場では関税政策が引き続き大きな不確実性をもたらしています。トランプ政権は、アルミと鉄鋼製品のセクション232条関税を25%から50%に引き上げました。加えて、カナダに対する関税免除を撤廃したため、米国のアルミ供給に影響が出ています。その結果、米国中西部のアルミP1020Aプレミアムは史上最高値を更新し、在庫補充コストを上回っています。スクラップの供給不足も、ビレットプレミアムの上昇要因です。
金属フォーカス 編集部コメント
世界のアルミ市場は、地政学的リスクや環境政策に大きく左右されています。EUのCBAM導入は、サプライヤーにとって新たなコスト要因となり、サプライチェーンの再構築を促すでしょう。また、米国の保護主義的な関税政策は、市場の分断を加速させています。今後は、低炭素アルミの需要拡大や、インドネシアのような新興生産国の動向が、グローバルなアルミ市場のパワーバランスを決定づける鍵となります。