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Deep-Sea Mining |
米国防衛大手ロッキード・マーティンが、太平洋の海底鉱物採掘計画を再始動しました。同社は、長年保有していた太平海底ライセンスへのアクセスを目指し、複数の鉱業企業と提携に向けた協議を進めています。この動きは、重要鉱物確保に向けた米国の戦略的な取り組みの一環であり、グローバルなビジネス読者層にとって重要な示唆を与えます。
ロッキード・マーティンの海底ライセンス再取得と戦略的転換
ロッキード・マーティンは、太平洋東部の国際水域にある鉱物資源が豊富なクラリオン・クリッパートン帯(CCZ)において、2つの海底ライセンスを保有しています。これらは1980年代初頭の海洋鉱業ブーム期に米国規制当局から付与されたものですが、数十年間未使用でした。同社は2023年に英国の深海採掘子会社であるUK Seabed ResourcesをノルウェーのLoke Marine Mineralsに売却し、この分野から撤退したかに見えました。しかし、Loke Marine Mineralsが今年4月に破産申請した結果、資産競売により、これらのライセンスがロッキード・マーティンの管理下に戻りました。
ロッキード・マーティンの最高執行責任者であるフランク・セント・ジョン氏は、深海鉱業グループからのライセンスへの「大きな関心」をフィナンシャル・タイムズ紙に語りました。同社は、重要なクリティカルミネラルの供給を確保するための選択肢を評価しており、ペンタゴンと密接に連携し、備蓄や代替調達戦略を支援する資源を特定しています。ドナルド・トランプ大統領が4月に国際水域での採掘ライセンス発行に関する米国の権利を主張する大統領令を出したことも、この動きを後押ししました。トランプ大統領はこの大統領令で、海底金属を戦略的資産として扱うことを提案しています。
多金属団塊の可能性と課題
太平洋には、電気自動車や電子機器に不可欠なニッケル、コバルト、銅、マンガンなどの多金属団塊が豊富に存在すると考えられています。米国政府の推定によると、米国がライセンスを持つ区域には10億トン以上のこれらの団塊が堆積しており、10年間でGDPに3,000億ドルの追加と10万人の雇用創出の可能性があります。カナダのThe Metals Company(Nasdaq: TMC)を含む北米を拠点とする企業も、最近、海底鉱業ライセンスを申請するなど、鉱業企業からの関心が急増しています。
しかしながら、海底鉱物採掘の野心は依然として荒波に直面しています。国連海洋法条約(米国は未批准)によって設立された国際海底機構(ISA)は、深海採掘に関する環境および規制枠組みの開発を続けています。169カ国とEUの代表者が、ロイヤルティ、課税、水中騒音や堆積物レベルを含む環境影響に関する基準を交渉しています。ISAは今月、ジャマイカで重要な協議を開催し、採掘作業を開始する条件を決定します。一方で、米国は海洋大気庁を通じて独自のライセンス制度を運用しています。
金属フォーカス 編集部コメント
ロッキード・マーティンの海底鉱物採掘への再参入は、単なる企業の事業拡大以上の意味を持ちます。これは、米国がクリティカルミネラルのサプライチェーンにおける地政学的リスクを軽減し、戦略的自律性を高めようとする国家的な動きと密接に連携しています。国際的な規制の不確実性は残るものの、米国政府の積極的な姿勢は、深海資源開発が将来の産業構造と安全保障に不可欠な要素となる可能性を示唆しています。