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First Quantum Minerals |
GDPの5%を占める巨大鉱山、2023年の閉鎖から再交渉へ
パナマ新政権の条件を受け入れ、国家利益優先の厳しい協議へ
カナダの大手資源企業ファースト・クアンタム・ミネラルズ(First Quantum Minerals)は、パナマ共和国との間で進めていた国際仲裁手続きを取り下げ、同国最大級の資源プロジェクトである「コブレ・パナマ(Cobre Panama)」銅鉱山の再開に向けた交渉の扉を開いた。
同社は、2023年11月にパナマ最高裁の判決と激しい市民抗議運動を受けて同鉱山の操業を停止。その後、同鉱山の操業契約を巡ってパナマ政府に対し最大200億ドル規模の損害賠償を求める仲裁を開始していた。だが、2024年7月に就任予定のホセ・ラウル・ムリノ次期大統領が「交渉の前提条件として仲裁の取り下げ」を要求したことを受け、同社はこれに応じた形だ。
コブレ・パナマ鉱山は、2023年に33.1万トンの銅を生産し、世界供給の約1.5%を占めた。パナマのGDPの5%、ファースト・クアンタムの収益の40%を占める極めて重要な鉱山であり、操業停止の影響は深刻だ。現地では1万人を超える雇用の喪失や、地元企業への未払金も発生している。
ムリノ次期大統領は、「交渉は極めて難航が予想されるが、国家の利益を最優先する」と強調。今後の協議では、操業形態の見直し、公的利益の確保、環境・社会的責任の明確化などが争点となる見通しだ。
ファースト・クアンタム側も、「法的対立ではなく建設的な対話を望む」と表明しており、再開交渉は数ヶ月をかけて進められると見られる。
金属フォーカス編集部コメント:
本案件は資源ナショナリズムと法的安定性のバランスを問う典型例だ。銅市場において同鉱山は供給安定性の鍵を握る存在であり、今後の進展は世界の銅価格にも影響を及ぼす可能性がある。交渉の行方が注目される。
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MINING