2026年のタングステン市場:地政学リスクが世界価格を左右

Tungsten


2026年のタングステン市場は、地政学的リスクと国際貿易摩擦の影響で極度の変動状態にあります。中国の輸出規制や米国の関税政策、資源ナショナリズムが供給を直撃し、アンモニウム・パラタングステン(APT)の海上市場は前例のない価格高騰を記録しました。世界的に供給確保競争が激化し、特に航空宇宙・防衛分野での需要が価格上昇を後押ししています。


中国輸出規制による供給ショック

2025年以降、中国政府はAPTを含むタングステン製品への輸出規制を即時適用しました。これにより、国際市場は直ちに供給不足に直面し、確保の必要性が顕著になりました。世界供給の3分の4以上を中国が占める構造下では、価格と需給の敏感度が非常に高く、輸出規制はAPT価格の急騰に直結しました。1月には1トンあたり900~940ドルだったAPT価格は、2月中旬には1,650~1,900ドルまで急上昇しています。


戦略的備蓄と政策の影響

フェロタングステンやタングステン精鉱も世界的に価格上昇を見せています。特に米国は、$120億規模の戦略鉱物備蓄プロジェクト「Project Vault」や、価格下限・優遇貿易枠組みなどを発表し、タングステン供給の多角化を進めています。政策と備蓄行動は、タングステン市場の需給構造に長期的な影響を与えており、航空宇宙、防衛、エネルギー、工具分野の買い手は中国依存からの脱却を強く意識しています。


世界の下流市場と採掘プロジェクトの加速

精鉱価格上昇の影響は、タングステンカーバイドや粉末市場にも波及しています。供給確保の必要性から、一部の下流企業は鉱石購入や自社加工を検討し、ウズベキスタン、米国、英国などで新規採掘プロジェクトが急ピッチで進行中です。新規鉱山の生産開始までには10年以上かかる場合もあり、短期的な供給増は期待できません。フェロタングステンも価格上昇が見られ、昨年の1kgあたり45~46ドルから、現在は200~210ドルに達しています。


見通し:構造的な供給逼迫が継続

在庫の枯渇、中国の輸出制限、短期的な新規供給の不足により、2026年も高い変動性は続く見通しです。産業用途での代替はほぼ不可能であり、リサイクルも短期的に対応できません。ヨーロッパ、米国、アジアでの新規鉱山開発は数年単位での供給参入となるため、タングステンは従来の工業金属というよりも、戦略資源としての性格を強めています。価格は政策決定、戦略的備蓄、地政学的状況に左右される状況が続くでしょう。


金属フォーカス 編集部コメント

2026年のタングステン市場は、地政学リスクと政策動向が価格形成に直結する戦略市場へと変化しています。中国依存からの脱却と米国主導の備蓄戦略は、今後の供給安定性を左右し、世界の下流産業や新規採掘プロジェクトに波及効果を及ぼすでしょう。戦略的資源としての価値が一段と高まっています。


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